「学ぶということ」
1994.11.18:コラム…「えがお通信」第9号より
何かのきっかけでカウンセリングに関心を持って学び始めたものの、この先どうすれば良いか分からないという声を多く聞きます。まだ勉強を始めたばかりの人も、数年学びつづけた人もそれはほとんど同じで、個人的にもよくアドバイスを求められます。
「あなたは何を目的に勉強しているの?」と聞きますと、ほとんどの人がはっきりとした答えができません。「できればカウンセラーになりたい」と言う人もありますが、「どういうところでどんな人を対象に?」となるとそこまでは考えたことがないとか、考えてもよくわからないということのようです。しかし、そう答えながらもほとんどの人が、個人を対象としたカウンセリングの場面をイメージしているのを感じます。
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学ぶ目的をはっきりさせることは大切ですね。自分の抱えている問題を解決することが目的の人は、ある程度学んでいきるのが楽になった時、自然と勉強の場から離れられるでしょう。学んだことを生かして人様のお役に立ちたいという人や、最初から人を援助する仕事につきたいと思った場合でも、収入に結びつけたいのかボランティアを目指すかによって、勉強の場を選ぶ必要があるのではないでしょうか?
一度この種の勉強を始めると次々に勉強会の情報が入ってきます。よほど信念を持って選択しなければあれもこれもときりがないのがこの世界です。現に私の知っている人で、どこにでも顔をだし、それなりに活躍もしていた人が、収拾がつかなくなって家庭に引っ込んでしまったという話を聞きました。意欲的な人でしたが、客観的に自分の行き方を見なおすことも良いのかもしれませんね。
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カウンセリング学習を生かす道は、非常に幅広いと言われます。本格的な臨床心理士を目指して学校に入り直した例もたくさん聞きます。身近なところでお役に立ちたいというのであれば、資格にこだわらなくてもやり方はありますし、かえってその方が相談しやすいという意見も聞きます。
私の場合は、企業の人間関係の教育に従事してかなりの年数になりますし、人間援助の実践もしてまいりましたが、本格的にカウンセリングを始めたのは10年以上もすぎてからでした。それで分かったことは、私には健康に生活をしている人がより健康に生きるための教育や、予防的なカウンセリングが一番あっているということでした。そしてこの分野の広がりが、これからの社会では最も必要だといわれます。
私が最近特に関心をもって勉強をし、またワークショップも開いて喜ばれるのが、プレイバック・シアターです。今年は日本に入ってきて10周年の記念の年ですが、年々確実にファンが増えて、各方面で様々な活動が始まりました。サイコ・ドラマの流れを受けた心理学のもっとも新しい理論と方法のひとつで、心身ともに癒されるところが大きな魅力です。最初は誰一人知った人のいない中に戸惑いながら参加した私でしたが、以来創始者ノジョナサン・フォックスや全国から集まってくる仲間に会えるのが楽しみで、毎年出かけるようになりました。今年はNPサークルの仲間5人も参加しましたので、以前から考えていたカンパニーをつくりゆくゆくはボランティアで施設訪問などと夢は広がります。
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カウンセリング学習の基本は自分を知ることにありますが、人間援助を目指すなら、同時にどの形が一番自分に適しているかを知ったうえで、より効率的な勉強をされることをおすすめします。